ギャンブラー・モーツァルト

ギュンター・バウアー「ギャンブラー・モーツァルト」春秋社 (原著2005年、訳書2013年)

"Mozart: Glück, Spiel, und Leidenshaft" by Günther G. Bauer

(C) 2005 Verlag Karl Heinrich Bock, Bad Honnef

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ボードゲーム読書会レジュメ

2015年8月28日 金曜

レポーター:草場純

ギュンター/バウアー著『ギャンブラー・モーツァルト』春秋社 2013年

◯著者:ギュンター・バウアー 1928〜 ザルツブルグで演劇を学ぶ。p.433奥付

◯ゲーム史的に重要な本である。資料に基づき慎重な言い方をしているが、モーツァルトに対して客観的(崇拝でもこき下ろしでもなく)に述べることによって、当時のゲームシーン(遊びの世紀)を描き出している。結論としてモーツァルトの晩年の貧窮(?)の原因は、ギャンブルであった蓋然性が高いのだが、それを述べることがこの本の目的ではない。

◯章立て

序 ゲーム論・遊び論

第二版への序 貨幣価値とモーツァルトの収入

第一章 子供時代 ゲームの伝播〜空間と時間の広がり 文化の底流 p.29

第二章 射的 いかに射的が流行したか。文化の中流 p.59

第三章 カードゲーム どんなカードゲームが遊ばれていたか。より文化の底流 p.103

第四章 ビリヤードと九柱戯 どれほどビリヤードに熱中したか。文化の中流 p.155

第五章 パーティーゲーム どんなことをして遊んでいたか。もっと文化の底流 p.209

第六章 言葉遊び 多種多様な言葉遊び。子供は遊びの中で学んだ。文化の最底流 p.259

第七章 お祭り、舞踏会、仮装パーティー 文化の中流 p.313

第八章 モーツァルトと富籤 富籤はペストのように p.393

◯登場するカードゲーム 以下のゲームが18世紀のザルツブルグで遊ばれていた。主に第二章第三章 p.105

オンバ…オンブル。16世紀スペインの4人ゲーム。17世紀の3人ゲーム。トリック系

ピケ…ピケット。フランス(スイス)の二人ゲーム。トリック系

コメット…コメット? 1757年。ストップ系

トライシャク…「35」という意味。ブラッグの一種(祖先?)と思われる。ギャンブル系

クインディッチ…「15」という意味なので、キンゴか? ギャンブル系 スコパ・ア・クインディチ。カシノ系

トレセッテ…トレセッテ。イタリアのゲーム。トリック系。

マリアージュ…マリッジ。フランス?の二人ゲーム。トリック系

ハルプスウヘェルク…「11.5」七点半のようなゲーム。ギャンブル系

ファロ…ファロ、ファラオ、フェロー。トランプでやるルーレット。ギャンブル系

タロット…タロット。どのゲームかは不明。トリック系

黄色の小人…ミシガン。ストップ系

魔女カード…クク。専用カード。ギャンブル系?

市場の商人…市場の商人 イタリアの競りゲーム。専用カード。ギャンブル系?

トラポラ…トラッポラ。16世紀初頭のゲーム。初めてAが最強に。トリック系

ブランデルン…ブランドル。17世紀の4人ゲーム。オンブルの四人用ドイツのゲームで、ソロ・ホイストの系統。トリック系

カドリーユ…カドリーユ。18世紀の4人ゲーム。オンブルの四人用。トリック系。

シュミーレン…シュミーラー(トリック系)か?

◎ギャンブルゲームの消長、トリックテーキングゲームの発展などのほか、ゲームの伝播、変形、改良などが読み取れはしまいか?

◯登場する野外・室内遊び p.217ほか

お部屋を貸しましょう、目隠し鬼、はいはいの目隠し鬼、変身ごっこ、くらべっこ、ヤコブはどこにいる?、叩いたのは誰?、キツネが死んだ、エルサレムへの道、カプチン僧、トイレ、魚釣り、羽ほうき、裁判ごっこ、へぼ雑誌、お話し作り、職人遊び、隠れんぼう、かけっこ、鬼ごっこ、手つなぎ鬼、ネコとねずみ、王様がいなくなった、質問攻め、etc.

ふくらはぎ計り

◯罰ゲーム

修道僧と尼僧、召使のハンス、口楽器、王様ゲーム、小鳩、魔女遊び、栗遊び、裁判官、研師。

◯遊びの階級性

下級貴族としてのモーツァルト家

芸能から芸術へ

時代のまなざし

◯ギャンブル史の史料的困難と、歴史のゲーム的解析の可能性

史料に対するバイアス

史料解釈に対するバイアス

史料保存の困難さ

ルールから考える

ルールとルールの周辺文化

◎参考にした文献

赤桐裕二著『トランプゲーム大全』スモール出版

パーラット著『トランプゲーム大百科』社会思想社

和泉龍一著『タロット大全』紀伊國屋書店

中野雄著『モーツァルト 天才の秘密』文藝春秋

(読書会の音源)

http://youtu.be/tT8aJjIw6MU

https://soundcloud.com/kihromah/7ieozx9y1h0o

(会話中に登場する文献)

海老沢敏著『モーツァルトの虚実 その生と死』ぺりかん社

ヴォルフガング・ヒルデスハイマー著『モーツァルト』白水社

マックス・フォン・ベーン著『ドイツ十八世紀の文化と社会』三修社