タロット大全

ボードゲーム読書会レジュメ

2015年6月26日金曜

伊泉龍一 著『タロット大全』紀伊國屋書店 刊 2004

草場 純

評価:

タロットに関して、緻密に客観的に解析した本であって、現在最も信用がおける日本語の本である。図版が多いのも評価できるし、典拠もしっかりしている。

概要:

まず I タロットの現在形 で、現在タロットがどう一般的に扱われているか、一般的なカードの後世はどうかといった基礎的な説明がある。

次に II タロットの歴史を、(1)タロット占いの歴史、(2)オカルトタロットの歴史、(3)タロットカードの歴史と、三方から述べている。ただし(4)タロットゲームの歴史は残念ながら欠けている。(イタリアにはオカルトタロットはないという言及はある。)

最後に III タロットの図像学 が続く。

0 はじめに:ここに挙げられているタロット好きの三類型(スピリチュアル派、プラグマティズム派、(ニュー)サイエンス派)は面白い。

I タロットの現在形:タロット、小アルカナ、大アルカナ。

現在における タロットの一般的な扱われ方の概観。カード内容の概説。日本小史。

II タロットの歴史:

(1) タロット占いの歴史…タロット占いは割りと新しい。1770年アリエットによってトランプ占いが本になる(その少し前から一部で行われていたらしい)。ダイス占い→トランプ占い→タロット占い。先行するジェブランとメレ。ル・ノルマンは自伝(回想録)をたくさん書いた。産業としての占い。

(レジュメに記載されていない補足:口頭では、この1770年フランスという時代設定が重要であることが補足された。メスメリズムの流行などと時を同じくしている)

(2) オカルトタロットの歴史…ジェブラン&メレからアリエット(低俗魔術)側と、レヴィ(高等魔術)側に別れる。カバラ・生命の樹・アストラルライトetc. レヴィからクリスチャン、パピュスなど、嘘を賭けばそれは真実になる。

黄金の夜明け団ほかの「秘密結社」の集合離散。ウェイトとスミス、クローリーから、アメリカンタロット。タロットの大衆化とグレイ。

(3) タロットカードの歴史…カードの歴史は占いやオカルトよりは長いが、散文的である。大アルカナのトリオンフォ起源説。(トリオンフォはオンブルの祖先。)

III タロットの図像学:描かれた時代に則して、素直に考える。何でも後から意味をたどれなくなると、神秘的に思えてくる。

∞ おわりに:山車行列の思わせぶりが600年にわたって人々の創造力を刺激した。これからも楽しまれていくであろう。

感想:日本と英米にはタロットゲームがないんだなあ。